蛮族の本懐

Ne quid nimisというモットーに抗うための試み。

胆振 珍道中(3/完):あの日の室蘭夜景は輝いていた ~思い出は未来のなかに~

前回のおさらい

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 今回は胆振旅行記の後篇(第3章)です。前回予告した通り、室蘭八景最後の一つ、室蘭港の夜景を中心に扱います。それではどうぞ。

味の大王 室蘭本店」のカレーラーメン

 むろらん温泉ゆららでツーリングの疲れを癒やしたところで、室蘭夜景見学の前に腹ごしらえをすることにしましょう。この日は10時前後のブランチ以降何も食べていなかったため、お腹はペコペコです。宿泊先のホテルまで戻り、TOURING SEROWの駐車を済ませた私が夕食に選んだのは、ご当地グルメ室蘭カレーラーメンです。

 室蘭カレーラーメンは札幌のみそ、旭川のしょうゆ、函館のしおに続く「北海道第四の味」として提唱されたご当地グルメです。今回お邪魔したのは味の大王 室蘭本店。みそ、しょうゆ、しおの各味が取り揃えてありますが、注文するのは当然カレーラーメンです。紙エプロンを1枚10円で販売しているのもちゃっかりしていますね。カレーがはねたら困るので(仕方なく)10円を支払いました。

 朝のほっきカレーに続き、本日二食目のカレーになります。いざ実食!

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 ドロドロしたルウは見た目に反してあっさりした味わいでクセがありません。悪く言えばコクがないということでして、縮れ麺もルウによく絡むのですが、ルウ自体が薄味のため(というかあまり味がしないので)、今ひとつ攻めきれていない感が否めません。まぁ、こればかりは好みの問題もありますので一概には言い切れませんが、個人的には微妙でした*1

 なお、後から入ってきたジャージ姿の女子中高生4人組と、2人の壮年男性はカレーラーメンを注文していませんでした。「この微妙さゆえに、地元の人はあまりカレーラーメンを食べないのかも」と密かに思いました(ごめんなさい)。

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日本十大工場夜景 室蘭夜景見学バスツアー

 さて、気を取り直して室蘭八景めぐりのクライマックス、室蘭夜景見学へ参りましょう。実は室蘭夜景見学には夜景見学バスツアーナイトクルージングが期間限定で用意されています。バスツアーは大人1,000円(先着40名)、ナイトクルージングは大人3,000円(催行人数5名以上)で参加できます。

 室蘭中心市街を除いて街灯が少なく、SEROWのヘッドライトだけで走るのは不安がありましたし、往路移動の疲れもありましたから、旧室蘭駅舎(現・室蘭観光協会)を昼間に訪れた際に夜景見学バスツアーを予約しておいたのです*2。ツーリング中でも、うまく公共交通機関を利用することで体力を温存できます。

室蘭駅舎~道の駅みたら室蘭~祝津公園展望台

 18:00に乗降場所の旧室蘭駅舎に集合。記念乗車券を受け取ると、「日本十大工場夜景」の文字が印字されていました。ナイトクルージングの紹介ページ(2014年現在表記)では「日本六大工場夜景」と書かれてありますが、3年の間に四都市が追加されているため、最新の情報ではありません。

 工場夜景の取り組みの端緒は、2011年2月の「全国工場夜景サミット」で室蘭・川崎・四日市・北九州の四都市が「日本四大工場夜景」宣言を行ったことです。その後、2012年11月に周南、2014年10月に尼崎、2016年1月に富士、2016年12月に千葉、2017年1月に堺・高石の各都市が加わり、現在では「日本十大工場夜景」となっています(2017年12月3日現在)。

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  さて、40名近くの参加者が集まり、ガイド付きのバスツアー(2時間半コース)が始まりました。最初の停車場所は道の駅みたら室蘭です。白鳥大橋の建設事業に関するパネル展示を見た後、すぐにバスに戻って休憩していたのですが、窓に差し込む夕陽に誘われ、また外へ。沈みゆく夕陽を見送りました。

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 緑色のウィンドブレーカーを着用しているのは今回のガイドさんです。

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 バスは道の駅を出発して、祝津公園展望台へ向かいます。道中、ガイドさんが函館どつく株式会社の巨大クレーンについて解説してくれました。曰く、船舶は外装を造った後に内装を整えるため、計器類や客室のベッドなどを運び入れるためにクレーンが使われるとの事。なかなか勉強になります。

 祝津公園展望台からは白鳥大橋と対岸のJXTGエネルギー室蘭製造所を一望できます。白鳥大橋(1998年完成)は東日本最大の吊り橋で、全長は1,380mあります。これからバスは白鳥大橋を通って向こう岸に渡っていきます。

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 なお、「祝津」という地名は道路案内標識のローマ字によるとShukuzu(=しゅくづ)と読むようです。小樽近郊の同名の地名がShukutsu(=しゅくつ)と音写されているにもかかわらず、地元民から「しゅくづ」と発音されていることは以前の記事で触れましたが、どう発音すべきなのか、ますます分からなくなって参りました。引き続き識者のコメントをお待ちしております。

陣屋除雪ステーション

 バスは白鳥大橋を渡って、通常は関係者以外立入禁止の陣屋除雪ステーションに停車しました。こちらは室蘭夜景見学バスツアーならではの見学ポイント。JXTGエネルギー室蘭製造所を間近で視認することができます。

 JXTGエネルギー室蘭製造所は元々製油所でしたが、2014年4月に原油処理を終え、現在の名前に改称されました。高くそびえるのはマリンブルーの集合煙突。高さは180mあります。また、工場夜景を構成する一つ一つの明かりは作業員のための常夜灯で、決して観光客向けのライトアップではないことにも注意が必要です。24時間フル稼働の工場をそのまま観光に活かす取り組みは、室蘭が「いま」と向き合っていることを感じさせます。

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 19時過ぎの白鳥大橋

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 集合煙突は市民投票をもとに、2014年初旬から10月にかけて「室蘭マリンブルー」に塗り替えられ、11月から36基のLED照明が設置されて今に至っています。

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崎守ビュースポット

 バスは最後の目的地、崎守ビュースポットへ向かいます。こちらも室蘭夜景見学バスツアーならではの見学ポイントです。時刻は19:30頃。すっかり日も暮れて、肌寒くなってきました。8月中旬とはいえ、日が暮れると長袖は必須でしょう。まずは横から白鳥大橋を眺めます。白鳥大橋、封鎖できません!(古い)

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 噴き上がる水蒸気と炎。この迫力ある工場夜景を見られるのも来年が最後かもしれません。何となれば、室蘭製造所は2019年3月末に閉鎖されるのですから。

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 2017年9月27日、JXTGエネルギーは室蘭製造所の閉鎖を発表しました。前述の通り、2014年4月に原油処理を終えて化学製品の工場に転換した室蘭製造所でしたが、石油製品需要の減少を受けて生き残りを断念する形となりました。室蘭製造所は2019年3月末に閉鎖され、2019年4月から物流拠点に転換するとの事ですから、常夜灯も不要になるのかもしれません。室蘭市長は「承服しかねる」とコメントを出していますが、JXTGが方針転換する見込みは薄いでしょう。来年は駆け込み需要でバスツアーやクルージング目当ての観光客が増えるのでしょうか。少しでも工場夜景に興味のある方は、来年のオンシーズンを逃さないように!*3新日鐵住金だってどうなるか分かりませんから*4

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 崎守ビュースポットでの夜景見学が終われば、後は解散場所へ向かうだけ。バスはもと来た道を戻っていきます。旧室蘭駅舎で降車すると時刻は20時を回っていました。心地よい疲労感の中、今夜はよく眠れそうだと思いました*5

帰路の寄り道 ~登別温泉 地獄谷~

 充実の室蘭夜景見学バスツアーから一晩明けて、曇り空の8月20日。室蘭から札幌まで約130kmを帰らなければなりません。ただ帰るのも芸がありませんので、登別の地獄谷とクッタラ湖に立ち寄ることにしました。この日は肌寒い上に明け方からお腹の調子が悪く、まさに地獄のツーリングというべき体調でしたが、折角の札幌長期出張の機会を活かさにゃ損だ!という気持ちだけで行程を増やしました(良い子は真似しないでネ)。

 9時頃に震えながらも地獄谷に到着。赤鬼と青鬼がお出迎えです。

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 地獄谷は登別温泉の北東、クッタラ火山の噴火活動により形成された直径450mの爆裂火口跡で、噴気孔からは最高98℃の熱湯や蒸気がいまも盛んに噴き出しています。泡を立てて煮えたぎる風景が鬼の棲む「地獄」の名の由来となりました。硫黄の臭いが強烈なため、体調が微妙な状態で行くと気分が悪くなる可能性があります。私は水分を摂りながら休憩するうちに回復の兆しが見えてきたため、少しずつ遊歩道の奥まで歩みを進めることにしました。

 以下、地獄谷の光景をご覧ください。

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 地獄谷から山道を登って北へ向かうと、硫黄泉が噴出する沼を見ることができます。今回紹介するのは、比較的手軽に行くことができる奥の湯と大湯沼です。

 奥の湯は前述のクッタラ火山の爆裂火口跡の一部で、表面温度75~85℃の湯沼です。灰黒色の硫黄泉が無機質な印象を与えますが、周囲には天然記念物・登別原始林が広がるなど、自然の多様性を感じさせる不思議な景勝地です。

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 大湯沼もクッタラ火山の爆裂火口跡で、周囲約1kmのひょうたん型の湯沼です。約130℃の硫黄泉が噴き出しており、表面温度でも40℃~50℃あります。「中洲に入ると埋ります」という看板が面白いですね。YouTuberは大湯沼で身体張ったらいいかもしれませんね。それはともかく、曇り空と蒸気が相俟って何が何やら分からない画像になっているのが少し残念。

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 大湯沼の周囲に広がる登別原始林。青空バックで撮りたかった!

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 日和山から望む大湯沼方面。日和山展望台からの眺望は樹木が生い茂るせいで見晴らしが悪く、正直イマイチでした。しかし、通りがかりのオジサンが「もう少し行ったカーブの先で視界が開けるよ」と教えてくれたおかげで、良い撮影スポットに出逢うことができました。こういう時、オートバイは路肩に駐車しても邪魔にならないので助かります。有珠山昭和新山もいいけど日和山もいいぞ。

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帰路の寄り道 ~神秘の湖 クッタラ湖~

 最後に、日和山の細くうねった峠道を抜けて、クッタラ湖(倶多楽湖までやって参りました。地獄谷から大湯沼までは外国人観光客を含め大混雑でしたが、流石にクッタラ湖までやってくる観光客はそう多くはないようです(そうは言っても、既に2台の車は停まっていましたが)。

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 ガスがかかって何も見えません。神秘の湖ってそういうことか(多分違う)。

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 湖畔から湖面を確認することはできましたが、やはり灰色の空と湖は相性が悪く、画的になんともイマイチな幕引きでした。青空は幸運の証なのですね。

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おわりに

 室蘭旅行の1ヶ月後、日経新聞の紙面上に室蘭製造所閉鎖の記事をたまたま見つけた時、目を疑ったのを今も鮮明に覚えています。「今行かなくても、次があるだろ」と高をくくっていたら、突然アイドルが卒業したりユニットが解散したりするのはよくあることですが、観光地についても同じことが言えるとは。テロリストによる爆破のような派手な行為などなくとも、ある日突然今までの「当たり前」は崩れ去るのだなと感慨深いです。

 最近、北海道拓殖銀行の破綻や山一證券の自主廃業から20年ということで、再び“Goodbye, Japan Inc.”的な言説に注目が集まっています。東芝神戸製鋼所、日産、三菱マテリアル東レといった企業の不正も次々と明るみに出ており、本邦は政治だけでなく経済も三流だったのだなと思わざるを得ませんが、私がこうした潮流の中で図らずも過去の栄光を辿る旅をしていたとは、何かの天啓なのでしょうか。今後もアマチュアの歴史家として、過去と現在の不断の往復運動を欠かさずにブログを執筆していきます。

Appendix

 今回一泊したホテルは窓のない部屋でした。朝食付きで5,000円しなかったので、殺風景でも文句は言いません(普通に安眠できた)。

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 また、室蘭からの帰路で通算走行距離1,000kmを達成しました。納車から1ヶ月強、初回点検の目安である1,000kmを無事走り切ることができました。通算走行距離は旅の結果でしかありませんが、自身の成長の証でもあります。次の2,000kmや3,000kmの目標に向けて、ツーリングの計画を立てていく所存です!

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*1:後日、苫小牧系のカレーラーメンの方がパンチがきいていて美味しいという噂を耳にしました。来年以降、北海道にロングツーリングに行く機会があれば検証したいところです。

*2:この時、室蘭観光協会室蘭コスプレカーニバルのチラシを見つけて、思わず手にとってまじまじと読んでしまいました。室蘭でもこんなイベントがあるのか、と失礼なことを思いましたが、後日調べてみると延べ1,200人が訪れ、なかなかの盛況だったようで驚きました(結局失礼な感想)。確かに撮影スポットとしては夏の北海道は魅力的かもしれませんね。今後の展開にも注目です。

*3:JXTGエネルギー室蘭製造所の閉鎖も、JR北海道廃線同様の構造的問題と考えるべきなのでしょうか。北海道の産業が抱える構造的問題を考えるにあたって、20年前の北海道拓殖銀行の破綻を再検討することが糸口となると考えています。そのために、北海道新聞社編『拓銀はなぜ消滅したか』北海道新聞社、1999年の読書を進めている最中です。

*4:北九州のスペースワールドも2017年末をもって閉園となります。これらの事象をもって本邦の大企業の綻びが露呈したと結論づけるのは早計かもしれませんが、いまが時代の転換期にあたっているという直観はあります。「大企業病」に罹患した人々はやがて大量に死に至るのではないでしょうか。

*5:ホテルの居室へ戻る前に、翌日のスムーズな出発のため給油に赴いたのですが、ガソリンスタンドで夥しい数の羽虫に襲われて大変な目に遭いました。夏のツーリングの天敵は虫。これは間違いない!